藤原のメモ

読んだ本や見た映像のメモとして。

「映画」ー愛と青春の旅だち

 

 

アマプラで200円でレンタルして見た。

 

なかなか良かった。

 

あらすじ:アマゾンから引用↓

青年ザックが海軍士官学校に入学したのは、自らの暗い過去と決別して新しい人生を手にするためだった。そして過酷な訓練に苦しむ彼の前に、町工場で働く娘ポーラが現れる…。

 

〇要素:軍隊訓練、恋愛、友情、80年代、リチャードギア、アメリ

 

〇分析、考察

小さい時、離れて暮らしていた、ろくでもない父親に引き取られる所が描かれる。治安もそんなによくない所。

時間がたち、青年になった主人公、父親はだらしないまま。主人公は父の反対を振り切って航空士官学校に通うことを決意。

ここで主人公の生い立ちを見せる。のちのちの主人公の言動や行動に納得感を与える。

後の厳しい訓練になぜ耐えられるのか。ここの描写がないと、そんなに頑張らなくても・・・と思われてしまう。また主人公は規律に反した行動をとるが、ここの描写がないと、納得感がでないだろう。

 

士官学校では軍曹が士官候補生の面倒をみる。その軍曹がのっけから士官候補生を罵る。

主人公と仲間が隠れて喋っているのを見つけると罰として腕立て伏せを命じる。

とにかく厳しさを見せる。これからつらいことが待っていると予感させる。

 

しばらくしてパーティーが開かれ、ヒロインに出会う。主人公の士官候補生仲間とヒロインの友達もここで出会う。出会う前にヒロインとその友達は士官候補生を狙っていることが描かれる。士官学校を卒業すると高収入の職を得られるから。

一時的な安らぎの描写。

 

訓練は激しさを増し、自主退学する奴も現れる。主人公は目立っており、規律違反をしたので軍曹により厳しい訓練を受けさせられる。

主人公と軍曹の対立を描く。

 

休日に主人公はヒロインと家族が住む家に招かれる。母親はもてなしてくれたが父親は冷たい態度。別れ際、ヒロインに秘密を明かされる。ヒロインと父親は血がつながってなく、本当の父親は主人公と同じ士官学校を卒業した人だと。つまりここでは、ヒロインの母が主人公と同じ立場の人に捨てられたことが明かされる。

 

ヒロインとその友達との会話の描写。友達は主人公の士官候補仲間の一人と付き合っていた。そこで友達はその士官仲間が自分に本気なのか試すために、妊娠したと嘘をつくことをヒロインに明かす。ヒロインは止める。

またここらへんでヒロインたちは移民の家系であること、母親たちと町の工場で働いていること、この町から抜け出したいことが明かされる。この町から脱出する方法が航空士官と結婚する事。

1982年の映画と言う事で、この時代を感じる描写にリアルさを感じた。

いまのアメリカでこの描写をされてもリアルな感じはしないからね。

母と娘が同じ立場に置かれようとしている事を見せることで、後の展開が理解しやすくなる。士官候補生が女を捨てることはよくあることだと。

ここは非常にうまい見せ方。この描写があるのとないのとでは、面白さが全然違う。感情の落差に影響する。のちに主人公はヒロインを振ることになるんだが、それは単発の出来事ではなく、繰り返されてきたものだと理解すると、より悲しさが増す。悲しくさせることで、それが覆されると、感情の落差によって、より面白いと感じる。

 

ここらへんの描写はヒロインを可哀そうに魅せて、ヒロインに感情移入させる仕掛け。また、ヒロインと友達を対比させ、ヒロインは正義、友達は悪、のような印象を与えた。それはなぜかと言うと、主人公がヒロインを振った時のインパクトを強めるためだろう。

もしここでヒロインが間違いを犯し、友達と策謀して主人公を騙そうとする展開だと、振った時のインパクトが薄れる。どっちもどっちみたいなことになる。またこの展開にするとヒロインの変化も描かなくてはならなくなり、冗長な印象を与えることになるかもしれない。一人の重要な登場人物の変化を描くのに5分10分では足りないだろう。だったら最初からヒロインは変化、成長しないキャラとして設置するのが正解となる。

 

主人公の士官候補仲間とその家族の描写。

士官候補仲間は家族にかなり期待されている感じ。仲間の背景を見せることで、感情移入させる。

 

主人公と士官候補生仲間との会話の描写。その仲間に、地元に婚約者がいることが明かされる。その人は死んだ兄の婚約者だった。仲間は婚約者のすばらしさを語る。主人公は仲間がその女を本当に愛しているのか疑問に思う。

仲間が自分の意志とは関係なく、両親の期待に沿うように行動している、と見せる。死んだ兄の代わりのように。

後にこの仲間は自殺するが、ここらへんの描写はその自殺に納得感を出すための仕掛けだろう。両親の期待を裏切り、学校を自主退学→一世一代の覚悟で、ヒロインの友達にプロポーズ→断られ、騙されたと知り自殺。両親と縁を切るような覚悟ってのがないと自殺に納得感が出ない。ここの描写は必須。

 

訓練終わりに、ヒロインから士官学校に電話がかかってくる。主人公は、出られる状態だったが、出かけたと言ってくれと繋いだ人に伝えた。

ヒロインは工場から電話を掛けていた。ヒロインは捨てられたと悟り、主人公に会いに行こうとするが、同じ工場で働いている母親に見つかり、涙ながらに止められる。ヒロインも泣く。

主人公とその仲間は、もともとヒロインたちとは遊びだったことを伝える描写。

主人公の非情な行動。主人公の一方的な裏切りはこの手の映画とかでは珍しいと思う。少なくとも俺はあまり見たことがない。

このシナリオは結構リスクがある。俺は見ているときにあれ?と思った。

と言うのも、厳しい生い立ちや厳しい訓練に耐えていた主人公に共感していたのに、主人公が共感できない行動をとり、共感しづらくなったから。シナリオ目線で言うと、あえて共感できない行動をとらせたと言うべきか。

 

結果から言うとヒロインと主人公は結ばれる訳だが、その前に何かしらの理由をつけて、一度離れさせなければストーリーが面白くならない。

だいたいの場合は外的要因もしくはお互いのすれ違いによって、ヒロインと一時的に分かれるわけだが、この映画は主人公の一方的な気持ちのみで別れることになる。

外的要因もしくはすれ違いによって別れる場合、観客の主人公への共感は保たれたままになる。この映画のように主人公の一方的な気持ちのみで別れる場合、観客の主人公への共感は、薄れることになる。

 

一応共感が薄れることを和らげるために、仕掛けは設置してある。

育ちが良くない描写、隠れて違反品の取引を行っている描写、静かにするところで仲間と喋っている描写、など品行方正とは離れた人物であることを描くことで主人公の非情とも思える描写も多少納得は出来る様に工夫はされている。

ただそうは言っても、一時的に違和感が出るのは必然。

ゆえにリスクがあると思った。この違和感を覆せるような展開にしないと白けてしまうから。

 

主人公が休日に士官仲間たちとバーで酒を飲んでいると、ヒロインが男を連れて入ってくる。主人公はヒロインを捨てたにも関わらず、ヒロインの事が気になる。ヒロインが男と離れた瞬間に話しかけに行く。ヒロインから冷たい態度を取られる。ヒロインは待ってる相手がいるからと主人公から離れる。

主人公はヒロインを無視する行動をとったが、まだ完全に情を捨てきれていない描写。この描写によって主人公への共感が少し戻ってくる。

 

ヒロインの友達は主人公の士官候補生仲間に、生理がこないと嘘をつく。士官候補生仲間は中絶費用は出すと言うが、友達は生むと言う。

その後、別の場面で、主人公とその仲間の会話。主人公は下ろせと助言するが、士官候補生仲間は決意した感じで、俺の子だから責任を取ると言う。

訓練中、士官候補生仲間はパニックを起こす。その後、自主退学。

ヒロインの友達に結婚指輪をもって会いに行きプロポーズする。しかしその友達は航空士官と結婚したかったのであり、退学した士官候補生仲間には興味がなく、断った。

主人公は士官候補生仲間が見つからないとヒロインに会いに行く。一緒にヒロインの友達の家に行き、ことの顛末を聞く。

その後、モーテルで聞き込みをした時、仲間が来たと聞き、その仲間が借りた部屋に入ってみると、士官候補生仲間が自殺していた。

ここまでの一連の流れは、主人公に行動変化を起こさせる切欠を与える。

このステップがあることによって主人公の行動の変化に納得がいくようになる。

自殺した仲間が助かっていたら、後の展開に納得感が出ない。自殺完了は必須。

 

主人公が士官学校に戻ると、軍曹を挑発する。最初軍曹はそれに乗らなかったが、主人公が自主退学すると言うと、挑発に乗り、殴り合いをすることに。

敵役との直接対決の構図。

本来、軍曹は挑発に乗る必要はなかったが、主人公が自主退学すると言うとそれに乗った。軍曹は主人公に自主退学してほしくなかったと言う事。この行動は軍曹の変化を表す。自殺してしまった遠因をつくってしまったという負い目もあるかもしれない、と思わせる行動変化。

ここで、敵役で無情に見えた軍曹に人間味を感じるようになる。

またここの描写で主人公の仲間の自殺によって生じたフラストレーションの行き場を作った。かなりうまい展開。

 

卒業式。最後、士官候補生がそれぞれ軍曹に挨拶をしに行く。卒業と同時に、主人公たちの立場は軍曹より上になる。そのため、軍曹は卒業生に敬語で別れの挨拶をしている。主人公の番。主人公は、あんたのことは忘れないぜとほほ笑んで言う。恥ずかしそうな軍曹はその時だけ上官になった主人公に命令口調で、早くいけと言う。

主人公はバイクで学校を去る。去り際に、軍曹が新たな士官候補生たちを罵っているのを見る。その罵っていた言葉は主人公たちに言っていたことと全く同じだった。

ヒロインが働いている工場に主人公は出向く。ヒロインの母親や友達、同僚に祝われて、主人公とヒロインは工場を出ていく。

完。

軍曹の描写がえぐいくらい良いな・・・。軍曹は主人公にだけタメ口をきいた。他の候補生と違って、特別な関係と感じさせる。これも軍曹の行動変化の一つ。

その後、同じ言葉で罵っていたと知らせることで、厳しさは職務上のものだったと気づかせてくれる。

これで完全に「敵」はいなくなった。いやーうまいなあ。

軍曹自身の変化、観客の見方の変化によって、感情の落差を作った。←面白いと思わせる時に一番重要。

最後、ヒロインを迎えに行くことで主人公の変化は完結する。

良い映画だった。

 

〇まとめ的な

面白いのはヒロインは変化していないってこと。ロマンスものでは通常ヒロインも変化する(よね?)。この映画では軍曹が変化した。

だからこの映画は軍曹と主人公の話ととらえることも可能。

上では端折ったけど、自殺した士官候補仲間以外の仲間との友情話もあった。

個人的には、全てひっくるめて主人公の成長の話と捉えるのがしっくりくる。

 

主人公とヒロインのロマンスもの的なとらえ方をすると、ヒロインとの対立が主人公自身で生み出したものだから、すごいマッチポンプ感があるんだよね。

ただそのマッチポンプ感をうまく消す展開や演出はすごいと思った。

アマゾンレビューをちらっと見たが、そのマッチポンプ感をぬぐえてなくて星3にしてた人はいたがw

やはりあの展開にはリスクがあったw

 

思考実験として、マッチポンプ感を消すとしたら、別れる要因を変える必要がある。

例えば、軍曹がらみの展開によって・・・とか。そうすると・・・あ、だめだ。主人公が変化する余地が少なくなるし、軍曹の後味も悪くなる。主人公の変化、成長によってマッチポンプ感を消すのが一番いいか。

 

アマゾンのレンタル期間が終わって思い出しながら書いてるから細かい点が間違ってるかも。まあ大筋は合ってると思う。